2015年4月7日火曜日

昼下がりのくま談義

雨あがりの午後にお茶会しました。

作家の多和田葉子さんと、サーカス招聘者であり研究者でもある大島幹雄さんと、三人で。
 
お二人には、不思議なご縁がありました。多和田さんの小説『雪の練習生』のなかに、主人公のシロクマの娘、トスカがサーカスでする芸「死の接吻」の相手、女調教師のウルズラというひとが出てくるのですが。この話、実話なのです。ほとんどの読者はこれが実話だと思っていません(わたしもそうでした)。そして、このウルズラの所属していた東ドイツ国立サーカスを日本に招聘したときの責任者が大島さんだったというのです。つまりは、シロクマのサーカスをフィクションの世界で描いた人と、同じサーカスを現実世界で扱ったひと、との顔合わせ......。
 
とても、楽しかったです。わたしにしてみれば虚構と現実の地平の続く風景を目の当たりにしているような気持ち。
話は大道芸に及び、どうやら投げ銭っていうのは、うまくいけば結構稼げるらしい(やろうかな)。という話でもりあがったり。

大島さんが、この東ドイツのサーカスを船旅しながら寄港のたびに船の上で公演をおこなうっていう実現できなかったプランがあった。というお話をうけて、多和田さんが、もし、その間に東ドイツが崩壊していたら、船の上のサーカス芸人は、帰る国がなくなってずっと船の上で暮らしたんでしょうね。という話をされて。
 
なんだか、クストリッツアの映画『アンダーグラウンド』のラストみたい。ちぎれた陸地が漂流していくのに、楽団がにぎにぎしく演奏を続け、人々は踊り続ける。というシーンが脳裏に浮かんで、うっとりするようなせつないような心地になりました。

この写真は、大島さんがお持ちになった、東ドイツ国立サーカス日本公演のパンフレットのページです。実際のウルズラ・ベッチャーさんとシロクマたちの写真。貴重なとても素敵なパンフレットでした。
 
 








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