2022年5月23日月曜日

ちかくてとおいひと

自分にとって、最も近くて、最も遠いひとは、家族なのだろうか。
 昨日、認知症が進んだ母が老人介護施設に入所した。 

 徘徊がはじまってからでは、遅いのではということになったのと、 ラウンジから葉山の海を一望できる感じの良い施設に丁度空きがみつかったことと、 いろいろな偶然がかさなり、姉と決断した。

 が、やはり、昨日、だれもいなくなった実家に立ち寄った時には、 さびしく、哀しかった。 もちろん、亡くなった訳ではないのだけど、遠くに行ってしまったのだな。と思った。 

この数ヶ月で、母はときおり幼児化した様子をみせた。 仕事場をなかなか離れることができないわたしに、電話でこんこんと不安をうったえ、 こちらも渾身でなだめ、 電話をきって10分後にまた同じ内容の電話が.... ということが一日中というなかで、なんとか仕事をすすめていた。出来るだけ、泊まりに行ったりもしたが、次の日には行ったことも覚えていなかった。親子だから構わないのだけど、いろいろ心配ごとは大きくなっていった。 存分にそばにいてあげられない自分の状況にもいらだった。

いまなんだか、ぼんやりしてしまって、映画をみてしまった。 『浅田家!』という、写真家の浅田政志さんの実話をもとに作られた映画。 なにかと泣けてしまって、とてもいい映画だった。 家族っていいな。という思いとともに、家族は儚い。と思った。 

ちかくてとおくてはかない。だからいとおしく、どこかこそばゆいのか。

 あるとき、母が電話をかけてきたのでとると「かずこちゃんよ!うふふ」 という声がした。まるで、友達みたいで。 きっとこのまま、認知症がすすむと、わたしが自分の娘であることもわすれて 「お友達になってね」とか、いいそうだ。 哀しいけど、それでもいいか、と思った。また、「はじめまして」から家族になろう。