2022年8月25日木曜日

朝日新聞連載小説『白鶴亮翅』多和田葉子著が終了しました

 この半年間、挿画を担当させていただいた、朝日新聞の連載小説『白鶴亮翅』多和田葉子著は8月14日に最終話をむかえ、終了しました。
 はじめて新聞小説を毎日楽しみに読んでいる。という声もいただいたり、多和田葉子さんの、小説の魅力をあらためて感じながら、挿絵を描かせていただきました。

 半年というのは長いようで短くあっという間ではありました。版画という技法をつかって毎日の挿絵を描くのは、無謀ではありましたが、今思えば、版画でやってみてよかったと思います。内容によって技法を変えているので、雰囲気のばらけた感じがあったかと思います。自分ではいいとおもっていたのですが、果たして...

 多和田さんの描く女性の日常は、不思議な奥ゆきを度々見せてくれて、くすっとしたり、そうそう、とうなずいたり、難しい問題について考え込んでしまったり...とてもいそがしく、それは、とても楽しい忙しさでした。挿絵となると、描くのが難しいものもありましたが、楽しんでいただけたのだったら嬉しいです。多和田さんには、ベルリンから、実際の太極拳教室の様子や蔵書の写真など送っていただいたり、ファンとしてはこのうえない嬉しい交流がありました。そして、実在の場所や史実がある場合、ほんのちょっとしたカットを描くにも、間違っていはいけないので慎重にせねばならず、そういう経験はあまりしてこなかったので、とても新鮮でした。

 挿絵は、そのうち、全回分をウエブなどで公開できたらとおもいます。
 これからも多和田文学から目が離せないですし(『太陽諸島』ももうそろそろでしょうか)、そういう日々の楽しみがあることが、生きていく理由のように思います。

 最後のシーンは雪のベルリンでした。
 猛暑のなか、小説からの涼やかな贈り物のようでした。




 

2022年8月5日金曜日

ice cream castles

先日ネットで映画『Coda』を観た。青春映画、好きなのです。。  

最後に主人公が歌うジョニ・ミッチェルの『both sides now』 がなんだか久しぶりに心に響いて、それからよく聴いている。ジョニの声が好き。
 例えば、つらいときにはいつでも私を呼んでよ、と歌うキャロル・キングの優しさも好きだけど、この歌の凛とした哲学的世界は、なんだかいまの自分にとても沁みてくる。 なにかに頼ろうとやたら触手をのばして喘いでいるのは、多分、コミュニケーションツールが増えたせいなのかもしれない。 

 この歌詞のなかのicecream catsleという言葉が好き。 

同じように、可愛い言い回しで好きなのが、across the universの最初の 「言葉たちは止まない雨のように紙コップへこぼれおち...」というところ。グラスでもマグカップでもなくチープな紙コップから...universは繋がっている....。  

いま熱波で熱い日々。icecream catsleがどこかにあるなら、しばらく籠城したいと思う。 

 Rows and floes of angel hair 
And ice cream castles in the air 
And feather canyons everywhere 
I've looked at clouds that way
 But now they only block the sun 
They rain and snow on everyone 
So many things I would have done 
But clouds got in my way 

 I've looked at clouds from both sides now 
From up and down 
And still somehow 
It's cloud's illusions
 I recall I really don't know clouds at all