この半年間、挿画を担当させていただいた、朝日新聞の連載小説『白鶴亮翅』多和田葉子著は8月14日に最終話をむかえ、終了しました。
はじめて新聞小説を毎日楽しみに読んでいる。という声もいただいたり、多和田葉子さんの、小説の魅力をあらためて感じながら、挿絵を描かせていただきました。
半年というのは長いようで短くあっという間ではありました。版画という技法をつかって毎日の挿絵を描くのは、無謀ではありましたが、今思えば、版画でやってみてよかったと思います。内容によって技法を変えているので、雰囲気のばらけた感じがあったかと思います。自分ではいいとおもっていたのですが、果たして...
多和田さんの描く女性の日常は、不思議な奥ゆきを度々見せてくれて、くすっとしたり、そうそう、とうなずいたり、難しい問題について考え込んでしまったり...とてもいそがしく、それは、とても楽しい忙しさでした。挿絵となると、描くのが難しいものもありましたが、楽しんでいただけたのだったら嬉しいです。多和田さんには、ベルリンから、実際の太極拳教室の様子や蔵書の写真など送っていただいたり、ファンとしてはこのうえない嬉しい交流がありました。そして、実在の場所や史実がある場合、ほんのちょっとしたカットを描くにも、間違っていはいけないので慎重にせねばならず、そういう経験はあまりしてこなかったので、とても新鮮でした。
挿絵は、そのうち、全回分をウエブなどで公開できたらとおもいます。
これからも多和田文学から目が離せないですし(『太陽諸島』ももうそろそろでしょうか)、そういう日々の楽しみがあることが、生きていく理由のように思います。
最後のシーンは雪のベルリンでした。
猛暑のなか、小説からの涼やかな贈り物のようでした。