4月10日、絵本『オオカミ県』(多和田葉子・文、溝上幾久子・画、論創社刊)が刊行されました。先駆け原画展をしていましたので、なんだか時間が前後しているような、妙な感覚ではあります。原画展は最初静かにはじまりましたが、日を追うごとに、お客様も増えていき、最後の週末には、開場を待っていただくほどになりました。多くの励ましと、貴重な感想もいただきました。ありがとうございました。
多和田葉子さんの、スパッと小気味よいアイロニカルな視点に、絵がうまくからんでいるのか、最後まで確信ないままでした。
でもそこは、物語が個々にもたらす自由なイマジネーションの世界には到底叶わないと観念しして仕上げました。この絵本のメッセージが伝わることがとにかく大事だと思うのです。
多和田さんの文学は、批判精神とユーモアが同居しているところに魅力があると思っています。そしてその根底にある、優しさという言葉でいいのかわからない、憂いにも似た、どこかひんやりとした場所。とても居心地の良い、孤独感を包容してくれるような空間があるように思います。そこはやっぱり、言葉でしか導けない空間なのです....。
チームでの本づくりというのも、わたしにとっては初めてのことでした。勘違い、行き違い、意見のぶつかりなども経てますが、なによりふと気がつけば、編集者さんとデザイナーさんに力強く引っ張っていただいていました。ですが、さみしいことに、編集者さんはこの本を最後に退職されたので、なにか、わたしはぽつんと、取り残されたような気持ちです。
でも....歩みを、続けなくてはなりません。
手に取って、もしなにか感じるものがありましたら、レビューやメンションなど頂けたらと思っています。
オオカミ県の住人の問題は、ほんの些細な「偏見」が、いかに馬鹿馬鹿しいかという、差別に喘ぐすべてのひとの問題であり、知らず知らず踊らされ、労働力やイマジネーションを搾取されている、ほとんどのひとたち、私たちの問題でもあるのです。
メッセージは直球すぎるため、絵本としてはかなりの変化球です。
どうか受け止めていただけますように。ばしっと。
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